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書籍紹介

現代イギリス小説の子どもたち ――無垢と邪悪を超えて

現代の子ども概念の「揺らぎ」を多角的に読み解く
著者 越 朋彦〔著〕
刊行日 2023年12月25日
ISBN 978-4-327-48169-8
Cコード 3098
NDCコード 934
体裁 四六判 上製 238頁
定価 定価3,520円(本体3,200円+税10%)

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内容紹介
イギリスでは1970年代以降、家族形態の多様化、福祉削減による貧困の拡大、子どもを巻き込む犯罪事件の増加、新自由主義的教育改革による管理強化などにより、子どもを取り巻く社会は大きく変化した。こうした状況の変化に伴い、チャイルドフッド・ノヴェル(子どもを中心的主題とする小説)の出版点数は増加しているが、その体系的な研究はまだ十分に行われているとは言えない。本書では、それぞれの社会状況の変化に関連したチャイルドフッド・ノヴェルを8篇取り上げ、子どもに関する最新の研究動向を踏まえ、「子ども表象」(子どもの造型)を様々な角度から解き明かす。また、一つの現代的ジャンルとしてのチャイルドフッド・ノヴェルの輪郭を描き出す。
 
<著者紹介>
越 朋彦(こし ともひこ)
1975年生まれ。東京都立大学人文社会学部准教授。上智大学文学部英文学科卒業。英国・レディング大学大学院英文学専攻博士課程修了(Ph.D.)。専門は17世紀イギリス文学、子ども表象、紅茶の文化史など。主な編訳書に『イギリスの新聞を読む――大衆紙から高級紙まで』(編註)、アドリアン・フルティガー『図説 サインとシンボル』(共訳)、マークマン・エリス、リチャード・コールトン、マシュー・メージャー『紅茶の帝国――世界を征服したアジアの葉』(いずれも、研究社)がある。
目次
序論 本書の目的と概要
 1 子どもに関する学問的言説の影響/2 子どもを取り巻く社会状況の変化
 
第1章 子どもの文化的構築に関わる言説の検討
     ――サラ・モス『夜間の目覚め』(2011年)
 はじめに――研究と育児の「境界領域」/『夜間の目覚め』の梗概/多様な言説の取り込み/おわりに――子ども期の構築性の主題化
 
第2章 発達論的子ども観の否定
     ――トビー・リット『デッド・キッド・ソングズ』(2001年)
 はじめに――タイトルの由来/『デッド・キッド・ソングズ』の梗概/本作の問題意識――二つの概念への懐疑/おわりに――新しい子ども社会学との接点
 
第3章 「ロマン派的子ども像」の解体
     ――イアン・マキューアン『セメント・ガーデン』(1978年)
 はじめに――『セメント・ガーデン』の概要/「ロマンティック・チャイルド」の解体/おわりに――「ロマンティック・チャイルド」から「危険な子ども」へ
 
第4章 「排斥」の論理による子どもらしさの構築
     ――ドリス・レッシング『破壊者ベンの誕生』(1988年)
 はじめに――「アポリア」としてのベン/怪物的子どもとしてのベンの造型/ベンの兄姉たち/「概念的排斥」/おわりに――子どもらしさの構築に潜む暴力性
 
第5章 多様化した家族形態の中の子ども
     ――ニック・ホーンビィ『アバウト・ア・ボーイ』(1998年)
 はじめに――二人の主人公/「年齢の逆転」/「子どもと大人の逆転」(1)――マーカスと母親フィオナ/「子どもと大人の逆転」(2)――マーカスとウィル/おわりに――主人公二人の変容
 
第6章 公営団地小説における子どもの「エージェンシー」
     ――スティーヴン・ケルマン『ピジョン・イングリッシュ』(2011年)
 はじめに――タイトルの意味/「鳩」の機能/「エージェンシー」/公営住宅団地と探偵/おわりに――能動的行為主体としての子ども
 
第7章 子どもを殺す子どもたち
     ――ジョナサン・トリゲル『少年A』(2004年)
 はじめに――バルガー事件と子どものイノセンス神話の危機/『少年A』の梗概/少年Aと少年B――暴力を通じたホモソーシャルな絆/少女殺害事件――犯行動機の文脈化/無垢と邪悪――二項対立の曖昧化/おわりに――作品の二律背反性
 
第8章 新自由主義的子ども
     ――マーゴ・リヴジー『ジェマ・ハーディの飛翔』(2012年)
 はじめに――作品梗概と問題設定/新自由主義の四段階/新自由主義的子ども像/新自由主義的子どもとしてのジェマ/「自己投資」に失敗する人物たち――アリソンとロス/国家による公的援助の否定/おわりに――作品の結末
 
結論 「子どもであること」の複数性
 
あとがき
初出一覧
引用文献一覧
索 引

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