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書籍紹介

日本人は英語をどう学んできたか ――英語教育の社会文化史

英語教育の過去を知らずに、進むべき道はわからない!
著者 江利川春雄〔著〕
刊行日 2008年10月23日
ISBN 978-4-327-41068-1
Cコード 1082
NDCコード 372
体裁 A5判 並製 296頁
定価 定価3,080円(本体2,800円+税10%)

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内容紹介
過去を踏まえない日本の英語教育改革はますます混迷の度を増している。進むべき方向を見定めるためには、日本人が英語をどう学び・教えてきたか、その歴史を謙虚にふり返り、その足跡を確かめることが必要だ。本書は、英語教育史研究の第一人者が、永く埋もれてきた膨大な資料分析と、歴史の生き証人への取材を通して、日本の英語教育の知られざる真実を描き出していく。社会文化史的な視点から英語教育の光と影を省察し、未来を照射する金字塔的作品。図版多数。
 
<著者紹介>
江利川春雄(えりかわ はるお)
1956年生まれ。和歌山大学教育学部教授・教育学博士。神戸大学大学院教育学研究科修士課程修了。現在、日本英語教育史学会副会長、神戸英語教育学会副会長、和歌山英語教育研究会会長など。著書に『近代日本の英語科教育史』(東信堂、2006年、日本英学史学会 豊田實賞受賞)、『英語教科書の歴史的研究』(辞游社、2004年、共編著)ほか論文多数。
目次
第1章 英語教育の歴史から学ぶ
 
1. 小学校英語教育のゆくえ
 問題点は明治に出つくしていた/英語教員の資質/小・中の連繋の不備/まず国語力を
2. 教え子を戦場に送った英語教育
 すでに日清戦争から/英作文や文字指導にまで/まずは「道徳心」の強調から 
3. 少人数クラスを求めて
 少人数クラス要求の歴史/文部省の決意表明はどこへ?/少人数制の実践から学ぶ
4. 「英語が使える日本人」幻想
 英語力衰退の経緯/コミュニケーション能力向上の試み/戦後の英会話ブームでも/
 「英語が使える日本人」戦略計画の表と裏 
5. 消された英語教材たち
 「満州国」で消された教材/太平洋戦争下で消された教材/戦後に消された英語教材/題材への批判的な目を
6. 受験英語の昔と今
 英学の終焉から受験英語へ/受験雑誌のあれこれ/通信教育とラジオ講座/明治・大正の高校入試は英検1級レベル!?
 /コミュニケーション能力重視の入試も/入試問題に投影する英語力低下
7. 入試英語問題の変遷
 英語問題の出題内容と出典/入試問題に投影する英語力低下
8. 文豪が英語教師だったころ
 夏目漱石から芥川龍之介へ/島崎藤村の温厚/石川啄木の熱血
9. 職業系学校による英語教育の大衆化 
 戦前の英語教育は多層構造/実業学校の英語教育/師範学校の英語教育/実業補習学校・青年学校など/
 戦後の英語教育大衆化を準備
10. 逆境をのり越えて 
 貧苦のなかで/ジャワでの敗戦抑留下で/米軍統治下の沖縄・奄美群島で
11. 教科書採択の昔と今 
 敗戦の焼け跡の中から/「教師の個性で自由に教科書裁定を!」/「教科書で平和と民主主義を教えよう!」/
 広域採択制による「国定」教科書化/中国の教科書のボリュームは日本の2倍 
12. 異文化へのまなざし
 「半文明人」の烙印を押されて/文明論から「脱亜入欧」論へ/庶民の異文化接触
13. 先輩たちの闘いから学ぼう 
 鋭い言語感覚の重厚な人間を育てよう/「週3」は生徒の切り捨て策/1980年代の「週3」反対運動から学ぼう
(コラム)英学雑談 1. 忘れられないあの1時間目
 
第2章 英語教科書の歴史から学ぶ
 
1. 戦前の英語教科書は個性豊か
 英語教科書――知ってるつもり!?/大らかな戦前の検定制度/検定教科書の隆盛/昭和期の光と影/
 国定英語教科書の系譜 
2. 英語教科書の定番教材
 ベートーベンの運命/ムジナの出没/定番化のメカニズム/データベースによる定番探し/定番教材は時代の鏡/
 定番教材のゆくえ
3. 英語教科書の文学作品
 英語=文学だった時代/試験に出る英文学/戦後の文学教材/指導要領による文学イジメ
 /大学教科書から消えた文学/どうしたらよいのか
4. 太平洋戦争期の英語教科書 
 続けられた英語教育/国民学校の国定教科書/中等学校の『英語』/陸海軍の英語教科書/外国語教育と階層差
5. 敗戦占領下の墨ぬり・暫定英語教科書
 墨ぬり・暫定教科書の価値/墨ぬり指令と削除方法/暫定教科書の成立事情/暫定教科書の発行状況/
 削除修正の内容と特徴/敗戦直後の学習状況/英語教育史の中の墨ぬり・暫定教科書
6. 戦後の英語教科書史から何を学ぶか
 戦後教科書は「墨ぬり」から/戦後民主主義とJack and Betty/「55年体制」下の指導要領と教科書/
 広域採択制で国定と同じに/1960年代の英語教科書/週3体制の衝撃/日本人主体の題材へ/
 地球的視野と多文化共生へ/「役に立つ英語」論の流れ/戦後の教科書史が教えるもの
(コラム)英学雑談 2. 昭和20年8月の海軍英語教育
 
第3章 英語教科書の図像学
  
1. 挿絵を「読む」
2. サルの知恵
3. 目線
4. 「誤り」の効用
5. 地 図
6. 明治人のしたたかさ
7. Lesson 1
8. 表紙の思想
9. 旗
10. 家族の肖像
11. 内なるロビンソン
12. 英語帝国主義
13. お国がら
(コラム)英学雑談3. 小学校英語教員養成史の謎を追って
 
第4章 英語教育の忘れられた先駆者たち
 
1. 移民による移民のための英語教材――筋師千代市と『英語独案内』 
 捕鯨と移民の村から/明治期和歌山の英語教育/筋師千代市の人と業績/『英語独案内』のユニークさ/
 民衆の自立的教育活動の書
2. 幻の英語教授法研究――枩田與惣之助と『英語教授法集成』
 運命的な出会い/枩田與惣之助はどんな人物か/『英語教授法集成』/講義資料『英語教授法綱要』の発見
 /英語教育史の中の枩田與惣之助
3. 小学校英語教育の先駆者――石口儀太郎と『新尋一教育の実際』 
 公立小1年から英語を教える/石口儀太郎はどんな人物か/和歌山師範附属小での英語教育実践/ 
 石口の実践が教えるもの
4. ビジュアル英語教材の白眉――玉置彌造と『写真で教へる英語』
 図書館廃棄資料の中から/玉置彌造はどんな人物か/玉置彌造の英語教育論/『写真で教へる英語』の
 面白さ/市井の英語教育者
(コラム)英学雑談 4. 心に残る本はハウツーものの対極――研究社と私
 
参考文献/初出一覧
あとがき 
索引 

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