「関連性」という単一の原則で言語伝達を捉えなおした“Relevance : Communication and Cognition”の全訳。原著は出版以来、言語学をはじめ関連諸分野に大きな影響を与えてきた。 第2版では、後記で、初版の出版以降の関連性理論の主要な発展を概観し、定式化、内容の両面を若干修正するための議論がなされている。更に本文への新たな注、後記への注が加えられ、参考文献も一新されている。
<原著(第2版)の序より> 本書では、人間の伝達の研究への新しい接近法を提唱する。この接近法は、人間の認知についての一般的な見解に基づくものである。人間の認知過程は、可能な限り最小の労力で可能な限り最大の認知効果を達成するような仕組みになっているということを論じる。 これを達成するために各個人は入手可能な最も関連性のあると思われる情報に注意を集中しなければならない。伝達するということは、ある個人の注意を喚起することである。よって、伝達するということは、伝達される情報が関連性のあるものであるということを含意することになる。伝達される情報は関連性の保証を伴うものだというこの基本的なとらえ方を初版では‘関連性の原則(principle of relevance)’と呼んだが、この版では‘関連性の第2原則’、あるいは‘関連性の伝達原則’と呼ぶ。この関連性の原則は人間の伝達を説明する上で必要不可欠なものであることを我々は論証し、発話解釈における言語的意味と文脈的要素の相互作用を説明するのに、いかに関連性の原則だけで十分であるかを明らかにする。